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智恵の墓(ちえのはか)は、出口和明が書いた小説。第三次世界大戦後の世界が舞台となっている。
機関誌『おほもと』昭和35年(1960年)12月号から昭和37年1月号まで、14回にわたって連載された。イラストは福田羚(出口礼子のペンネーム)が画いた。
あらすじ
〔最終回の冒頭に掲載された「前回までのあらすじ」を転載する〕
第三次大戦が勃発し、世界は滅亡するがヒマラヤの峰には三人の人類が奇蹟的に生き残る。J・B・A卿、エミリー、卿によって雪男に変ぼうさせられたポポロポの三人である。彼らは山麓の鏡湖畔を天地郷と命名し、新しい国造りをはじめる。
だが三人の原始的生活も長くはつづかなかった。エミリーを争って卿はポポロボを亡き者にしようと企てる。ポポロポは卿の悪計を知り、激怒のあまりあやまって卿を殺す。
卿は死んでも、エミリーの体内には卿の血が残されていた。生まれた子は卿に生き写しであった。エミリーは歓喜し、その子をアポロと名付け、太陽の申し子だと信じこませる。
次いでポポロポとの間に七つ子が生まれる。六人の娘の長女をアルテミス、末の男の子をヘファイスという。八人の子らはすくすく育った。
アポロが六女のエオスをいじめると幼いヘファイスがそれをかばって争った。それ以来、ヘファイスは太陽の子に反逆した罪で、エミリーや兄妹たちから除け者にされる。だがポポロポに似たヘファイスは逆境にも負けず、強く成長した。
エミリーは卿の血で天地郷を永遠に支配させるため、アポロを神格化した神話を創造し、子供たちの頭に植えつける。そして天元二十年──十八才のアポロはアルテミスを正妻、五人の妹たちを従妻として次々と結婚式をあげていった。
六日目のエオスの結婚の夜、彼女は本能的な嫌悪感からその初夜を拒み通す。太陽の子を拒絶したエオスはエミリーや姉たちの憎しみを一身に受ける。エオスは苦しみに耐えかね土男の子とさげすまれるヘファイスと共に天地郷を脱け出る。
エオスとヘファイスは一夜を密林であかすが、エミリーの命を受けたポポロポに見つけ出される。彼らはポポロポから生命の尊さ、人間の使命について教えられ、再び天地郷に帰ることを決意する。